本文へ移動
メニュー
  • 譲渡をご検討の方
  • 譲受をご検討の方
  • 選ばれる理由
  • M&Aの流れ
  • 業種別解説
  • 会社案内
  • 無料相談する
工事M&A・会社売却・事業承継を譲渡企業様手数料0円で支援します。
工事M&A総合センター
  • 譲渡をご検討の方
  • 譲受をご検討の方
  • 選ばれる理由
  • M&Aの流れ
  • 業種別解説
  • 会社案内
  • 無料相談する
工事M&A総合センター
  • 譲渡をご検討の方
  • 譲受をご検討の方
  • 選ばれる理由
  • M&Aの流れ
  • 業種別解説
  • 会社案内
  • 無料相談する
  1. ホーム
  2. コラム
  3. 建設会社の会社売却で未払残業・勤怠・社会保険はどう見られる?譲渡企業が押さえたい労務DDとM&A実務

建設会社の会社売却で未払残業・勤怠・社会保険はどう見られる?譲渡企業が押さえたい労務DDとM&A実務

2026 7/11
コラム
2026年7月11日
建設会社の会社売却における未払残業・勤怠・社会保険の労務DDを表す建設現場での握手

建設会社の会社売却やM&Aを検討するとき、決算書や建設業許可、受注残と同じくらい早い段階で確認されるのが「労務」です。とりわけ、未払残業代の可能性、勤怠記録の精度、固定残業代の設計、変形労働時間制の運用、社会保険の加入状況は、譲受企業の判断や最終契約の条件に直接影響します。

建設業では、現場への直行直帰、早朝の資材積込み、現場間の移動、日報作成、安全書類の準備、遠方出張、天候による工程変更など、労働時間の境界が曖昧になりやすい業務が少なくありません。「これまで社員から請求されたことがない」「昔からこの方法で運用している」という事情だけでは、会社売却時の説明として十分ではありません。

一方で、労務上の論点があるからといって、直ちに建設会社の売却が不可能になるわけでもありません。重要なのは、問題を隠さず、事実と推計を分け、改善策と今後の運用を示すことです。本記事では、建設会社の譲渡企業が、未払残業・勤怠管理・社会保険を中心とする労務デューデリジェンス(労務DD)にどう備えるかを、実務的な順序で解説します。

目次

建設会社の会社売却で労務DDが重視される理由

株式譲渡によるM&Aでは、会社という法人がそのまま引き継がれます。雇用契約だけでなく、過去の賃金計算、社会保険、労働安全衛生、就業規則の運用に関する潜在的な負担も会社に残るため、譲受企業は「買収後にどの程度の追加費用や紛争が発生し得るか」を確認します。

建設会社では、人材そのものが受注力と施工力の源泉です。施工管理技士、主任技術者、監理技術者、登録基幹技能者、職長、熟練技能者などの在籍状況は企業価値に関わります。その一方で、長時間労働や不透明な手当、休日取得の難しさが放置されていると、M&A後の離職を招き、許可維持や配置計画、工期管理に影響するおそれがあります。

譲受企業は、単に過去の未払額だけを見るのではありません。現在の人員で受注残を安全に消化できるか、買収後に勤怠システムや賃金制度を統合したとき人件費がどの程度増えるか、元請として適切な労務管理を継続できるかも検討します。したがって、労務DDは「過去の問題探し」ではなく、買収後の事業計画を成立させるための確認作業でもあります。

労務DDで最初に確認される資料

労務DDでは、就業規則だけを提出して終わりにはなりません。規程と実態が一致しているかを確認するため、複数の資料を突き合わせます。譲渡企業は、少なくとも直近数年分について、次の資料を整理しておくと説明が進みやすくなります。

  • 従業員名簿、雇用形態、入退社日、保有資格、所属現場が分かる一覧
  • 雇用契約書、労働条件通知書、賃金規程、退職金規程
  • 就業規則、時間外・休日労働に関する協定届、変形労働時間制に関する書類
  • タイムカード、勤怠システム、入退場記録、日報、車両運行記録
  • 賃金台帳、給与明細、賞与台帳、固定残業代や各種手当の計算資料
  • 社会保険・労働保険の加入資料、算定基礎届、年度更新資料
  • 有給休暇管理簿、健康診断記録、安全衛生関係資料
  • 労働基準監督署、年金事務所、労働局等からの指導・調査記録
  • 労働紛争、退職者からの請求、ハラスメント相談の記録

一覧表を作る際は、氏名や給与額を無秩序に共有するのではなく、M&Aの進行段階に応じて匿名化や閲覧権限を設計します。初期検討では集計値、基本合意後のDDでは個別資料というように開示範囲を段階化すると、従業員の個人情報を守りながら必要な検討を進められます。秘密保持と情報開示の考え方は、当サイトの工事会社M&Aの秘密保持と候補先選びも参考になります。

建設業で未払残業が生じやすい代表的な場面

直行直帰と現場への移動時間

自宅から現場へ直接向かう時間が常に労働時間になるとは限りません。しかし、会社や資材置場への集合を指示し、資材や工具を積み込み、社用車で複数人を現場へ運ぶ場合などは、単純な通勤とは評価しにくい場面があります。誰が、どこに、何時に集合し、移動中にどのような指示や業務があったのかを具体的に確認する必要があります。

会社の勤怠表では現場到着時刻を始業としていても、車両のGPS、ETC利用履歴、アルコールチェック、鍵の貸出記録、チャットの指示時刻から、より早い時間に業務を開始していたことが分かる場合があります。DDでは一つの記録だけでなく、客観資料との整合性が見られます。

始業前の朝礼・KY活動・資材積込み

建設現場では、朝礼、危険予知活動、ラジオ体操、保護具確認、作業手順の共有が行われます。参加が事実上義務付けられ、会社の指揮命令下で実施されている場合、その時間を勤怠に含めているかが論点になります。また、始業前の清掃、車両点検、工具準備、積込みが常態化していないかも確認対象です。

「全員が自主的に早く来ている」という説明だけでは足りません。現場の入場時刻、朝礼開始時刻、日報、上司からの指示を照合し、実際の運用を示せるようにします。今後は、始業前作業を禁止するのか、必要な作業として勤務時間に組み込むのかを明確にすることが大切です。

終業後の日報・安全書類・写真整理

現場作業が終了した後、事務所に戻って工事写真を整理し、日報、作業員名簿、施工体制台帳、発注者への報告資料を作成するケースがあります。現場の退場時刻だけで勤怠を切っていると、これらの事務作業が記録から漏れる可能性があります。クラウドサービスのログイン履歴、ファイルの更新時刻、メール送信時刻が補助資料になります。

デジタル記録は便利ですが、ログ時刻がそのまま労働時間を意味するわけではありません。自動同期や個人端末からの短時間閲覧もあるため、機械的に合計せず、業務の内容と指示関係を確認します。建設DXデータの整理については、工事写真・電子契約・原価管理システムのDDも併せて確認してください。

休日出勤と振替休日・代休の混同

工程の遅れ、天候回復後の集中施工、発注者都合の夜間工事などにより、休日出勤が発生することがあります。現場では「後で代休を取る」運用が一般化していても、事前に休日を振り替えたのか、休日労働後に代償として休ませたのかで、賃金計算上の扱いが異なり得ます。

休日カレンダー、振替の通知、勤怠、給与計算が一致しているかを確認し、法定休日と所定休日も区別します。有給休暇を本人の申請なく休日出勤の穴埋めに使っていないか、現場終了後にまとめて処理していないかも見直します。

固定残業代は「手当を払っている」だけでは足りない

建設会社では、現場手当、職務手当、営業手当、管理手当などに時間外労働分を含めていることがあります。固定残業代として有効に運用するには、通常賃金部分と時間外労働の対価部分が区分され、何時間分に相当するのか、超過分をどのように精算するのかが分かる状態にしておくことが重要です。

雇用契約書には「残業代を含む」とだけ記載し、給与明細には単に「現場手当」と表示している場合、従業員が固定残業代として認識できていたのか説明が難しくなります。また、固定時間を超えた残業があるのに追加支給していなければ、差額計算が必要となる可能性があります。

DDでは、契約書の文言だけでなく、基礎賃金から除外している手当の範囲、割増率、月ごとの実労働時間、超過精算の実績を確認します。管理監督者として残業代の対象外にしている工事部長や営業所長についても、肩書ではなく権限・待遇・勤務実態が見られます。制度に疑問がある場合は、専門家の確認を受け、将来分から適切に改定する手順を検討します。

変形労働時間制で確認されるポイント

繁忙期と閑散期がある建設会社では、1年単位または1か月単位の変形労働時間制を採用していることがあります。しかし、就業規則に制度名を書いただけで、対象期間、労働日、各日の労働時間が適切に定められていない場合、想定どおりの計算ができないことがあります。

特に注意したいのは、年間カレンダーを作成した後に、受注や天候に応じて休日と勤務日を頻繁に入れ替えているケースです。現場ごとに勤務日が異なるのに、会社共通カレンダーだけで管理している場合も、実態の把握が困難になります。協定届、就業規則、年間カレンダー、実際のシフト、給与計算のつながりを確認します。

制度を採用しているから残業が発生しないわけではありません。期間内の総枠、日・週の定め、時間外労働の集計を正しく行う必要があります。M&A準備では、制度の法的評価を自己判断で確定せず、現状の書類と運用を専門家に示し、必要な修正を行うことが安全です。

2024年以降の時間外労働上限規制とM&A

建設業にも時間外労働の上限規制が適用され、長時間労働の管理は譲受企業にとって一層重要な確認事項になっています。譲渡企業は、協定届を提出しているかだけでなく、月別・従業員別の時間外労働を把握し、上限に近づいたときのアラートや業務調整が機能しているかを説明できるようにします。

長時間労働が特定の現場代理人や積算担当者に集中している場合、その人が退職すると業務が止まる可能性があります。これは労務リスクであると同時に、属人化リスク、キーパーソンリスクでもあります。残業削減のための増員、外注、分業、クラウド化、発注者との工程調整を、買収後の統合計画に落とし込む必要があります。

規制対応のために表面的に勤怠を短く入力させることは、問題を見えにくくするだけです。パソコンのログや現場記録と乖離すれば、DDで説明困難になります。正確な把握を起点に、受注量と施工能力のバランスを見直すことが、企業価値を守る近道です。

社会保険・労働保険で確認される事項

加入対象者の取り扱い

正社員だけでなく、短時間勤務者、継続雇用者、役員兼務者、試用期間中の従業員などについて、加入要件と実際の手続が一致しているかを確認します。「本人が希望しなかった」「試用期間だから加入させていなかった」という社内慣行だけでは説明できない場合があります。

現場で働く人が雇用契約なのか請負なのかも重要です。個人事業主として扱っていても、仕事の諾否、指揮命令、勤務時間、報酬の決め方、道具の負担、代替性などの実態によっては、契約名だけで整理できません。一人親方の名簿、注文書、請求書、入場記録を照合し、社員との境界を明確にします。

標準報酬月額と手当

現場手当、資格手当、通勤手当、住宅手当、継続的な出張日当などの扱いが、給与計算と社会保険手続で整合しているかが確認されます。名称だけで判断せず、支給条件と実費弁償性を確認します。賞与の届出、昇給時の随時改定、算定基礎届の内容も対象です。

未加入や届出誤りの可能性がある場合は、対象者、期間、会社負担分・本人負担分、延滞に関する可能性を整理します。推計値を一つに決め打ちせず、前提を明示したレンジで示すと、譲受企業は価格や補償条項を検討しやすくなります。

労災保険と現場単位の管理

建設業では元請・下請関係や有期事業の扱いがあり、一般の事業会社とは異なる確認が必要です。労働保険の年度更新資料、工事台帳、請負金額、下請構成、労災事故記録の整合性を確認します。事故が発生していなくても、加入・申告方法が継続可能かを説明できることが大切です。

工事保険や賠償責任保険と労災保険は目的が異なります。民間保険に加入しているから労務上の確認が不要になるわけではありません。保険DDについては、工事保険・賠償責任保険のM&A実務をご覧ください。

労務リスクは企業価値にどう反映されるか

未払残業代等の可能性が見つかった場合、譲受企業は想定負担額だけでなく、発生確率、対象期間、証拠の強さ、従業員との関係、是正状況を見ます。影響の反映方法は一つではなく、株式価値の調整、クロージング前の精算、エスクロー、表明保証、特別補償、前提条件など、案件に応じて設計されます。

例えば、勤怠記録が存在せず推計幅が大きい場合は、譲受企業が保守的な前提を置きやすくなります。反対に、客観記録を回収し、対象者別の試算を行い、運用を是正し、一定期間の改善実績を示せれば、不確実性を下げられます。同じ潜在額でも、「何が起きているか分からない会社」と「範囲を把握して改善中の会社」では交渉のしやすさが異なります。

また、残業代を適切に払うことで将来の人件費が増える場合、正常収益力の計算にも影響します。過去の利益が、未計上の人件費によって高く見えていなかったかを検証し、買収後に必要な人員・外注費を事業計画へ反映します。企業価値を守るために問題を小さく見せるのではなく、持続可能な利益水準を共有する姿勢が重要です。

譲渡企業が行うべき労務DDの準備手順

手順1:雇用区分と勤務パターンを棚卸しする

最初に、正社員、契約社員、パート、日給月給者、出向者、役員、一人親方などを区分し、誰がどの現場・事業所で働いているかを一覧化します。職種、資格、給与体系、所定労働時間、直行直帰の有無、社用車利用、宿泊出張の頻度も記載します。

全員を同じ方法で見るのではなく、施工管理、職人、積算、営業、事務など勤務実態が異なるグループに分けると、サンプル確認を効率的に行えます。資格者については配置状況や退職リスクも併せて整理します。

手順2:規程と実態の差を確認する

就業規則上の始終業時刻、休日、休憩、手当、申請方法を、実際の現場運用と照合します。社長や総務担当者だけで判断せず、現場責任者へのヒアリングも行います。「休憩60分」と規定されていても、昼休みに電話当番や車両移動をしている場合、実態を確認する必要があります。

差異を見つけたら、直ちに過去の法的結論を断定するのではなく、事実、資料、会社の認識、専門家の見解を分けて記録します。M&Aの相手に説明するときも、この区分があると誤解を減らせます。

手順3:複数の客観記録を回収する

勤怠記録だけでなく、現場入退場、日報、工事写真、社用車、ETC、アルコールチェック、パソコン、メール、チャットなどから、利用可能な記録を特定します。すべてを無期限に収集するのではなく、保存期間、個人情報、費用を踏まえ、専門家と対象範囲を決めます。

記録同士に差がある場合は、従業員に一律の説明をさせるのではなく、差が生じる業務上の理由を確認します。現場から自宅へ移動した後に日報をまとめる、端末が共用であるなど、記録の性質を理解して推計します。

手順4:潜在額をシナリオ別に試算する

未払残業等の試算では、対象者、基礎賃金、割増率、労働時間、期間など多くの前提があります。一つの金額だけを提示すると、その前提が崩れたときに交渉が混乱します。保守的ケース、合理的な中心ケース、限定的ケースなど、前提を明記した複数シナリオを作る方法があります。

試算は税務・社会保険・会計にも波及し得ます。会社側だけで確定せず、弁護士、社会保険労務士、税理士、公認会計士など、案件に応じた専門家の連携を検討します。

手順5:将来運用を先に改善する

過去分の評価に時間がかかっても、今後の勤怠方法は早めに改善できます。スマートフォン打刻、現場ごとの始終業ルール、残業申請、休日振替の手順、管理職向け研修、月次モニタリングを導入し、実績を残します。

ただし、M&A直前に賃金体系や就業規則を大幅に変更すると、従業員の不安を招くことがあります。不利益変更の問題や説明方法にも配慮し、専門家の助言を得ながら段階的に進めます。秘密保持が必要な段階では、M&Aを理由として明かさず、通常の労務改善として実施できる範囲を検討します。

手順6:開示資料に経緯と改善状況を添える

資料をデータルームへ置くだけでは、譲受企業が背景を理解できないことがあります。発見した論点ごとに、発生経緯、対象範囲、会社の認識、推計、是正策、担当者、実施時期をまとめた説明メモを作ります。

質問への回答は、確認済み事実と未確認事項を区別します。不明な点を無理に断定せず、「どの資料を確認中か」「いつまでに回答できるか」を示す方が、信頼を維持しやすくなります。

株式譲渡と事業譲渡で労務の見え方は異なる

株式譲渡では法人が継続するため、雇用主は原則として変わらず、過去の労務関係も会社に残ります。譲受企業は潜在債務を詳細に確認し、契約条件で対応します。従業員にとって雇用契約の連続性を保ちやすい一方、過去の問題を切り離しにくい点が特徴です。

事業譲渡では、譲渡対象事業に関する契約や資産を個別に移転します。従業員の雇用を移すには本人の同意を含む手続が必要となるため、誰が移籍するかが事業価値を左右します。「事業譲渡なら労務リスクが一切なくなる」と単純には言えず、承継条件、説明、同意取得、退職給付などを個別に設計します。

どのスキームが適切かは、許認可、契約、税務、潜在債務、従業員承継などを総合して判断します。労務問題だけを理由に早期にスキームを固定すると、建設業許可や取引契約で別の問題が生じる可能性があります。

従業員への説明はいつ、誰が、何を伝えるか

労務DDでは個人別資料が扱われる一方、M&Aの事実を全従業員へ早期に公表できないことがあります。漏えいすると、退職、取引先への伝播、候補企業との交渉中断につながり得ます。そのため、初期は匿名化した集計資料を使い、個人情報は必要性が高まった段階で限定開示します。

公表時には、雇用、給与、勤務地、役職、評価制度、退職金、福利厚生がどうなるかを、決まっていることと未決事項に分けて説明します。「何も変わらない」と言い切った後で制度統合が行われると、不信感につながります。変更予定が未確定なら、検討手順と相談窓口を示すことが有効です。

建設会社では、現場が分散し、全員を一度に集めにくい場合があります。全体説明、拠点別説明、個別面談を組み合わせ、現場代理人や職長だけに伝言を任せない体制を作ります。重要資格者には、役割、処遇、買収後の組織を丁寧に説明し、無用な引き留め金だけに頼らず将来像を共有します。

よくある失敗と改善策

失敗1:勤怠データを消す、作り直す

過去の記録に不整合があるからといって、データを削除したり、実態と異なる資料を作ったりしてはいけません。問題そのもの以上に信頼を損ない、表明保証や契約責任の問題を深刻化させます。元データを保全し、補足説明と是正記録を分けて残します。

失敗2:社員から請求がないことを安全の根拠にする

在職中は関係性を考えて申し出ない従業員もいます。M&Aの公表や制度変更、退職を契機に請求が表面化する可能性があります。請求の有無だけでなく、客観資料と制度運用を確認します。

失敗3:社長だけで全現場の実態を回答する

経営者が把握しているルールと、各現場の慣行が異なることがあります。総務、工事部長、現場責任者、給与計算担当者など、複数の関係者から限定的に事実を集めます。ただし、M&A情報の共有範囲は必要最小限に管理します。

失敗4:是正による将来コストを事業計画に入れない

残業代を適正化し、人員を増やし、休日を確保すれば、短期的に人件費や外注費が増えることがあります。この増加を無視した利益計画は、買収後に崩れます。受注単価の見直し、生産性向上、工期管理と併せて計画します。

譲受企業から想定される質問

  • 現場への移動、資材積込み、朝礼は何時から労働時間としているか
  • 勤怠記録と日報、入退場、車両記録に差がある場合の理由は何か
  • 固定残業代の対象者、時間数、超過精算実績はどうなっているか
  • 変形労働時間制の協定・カレンダーと実際の勤務は一致しているか
  • 時間外労働上限に近い従業員と、その業務を代替できる人は誰か
  • 一人親方・外注と従業員をどの基準で区分しているか
  • 社会保険未加入、標準報酬、賞与届の誤りはないか
  • 労基署等の調査、是正勧告、従業員との紛争はあったか
  • 買収後に必要となる人件費とシステム導入費はいくらか

これらの質問に対し、口頭の印象ではなく、資料の所在と数値を示して回答できる状態を目指します。回答表には、質問、回答、根拠資料、追加対応、責任者、期限を記載すると管理しやすくなります。

FAQ:建設会社売却と未払残業・社会保険

質問1. 未払残業の可能性があると会社売却はできませんか?

可能性があるだけで直ちに売却できなくなるわけではありません。対象範囲と推計額、証拠、是正状況を整理し、価格調整や補償条項などを交渉します。隠して後から発覚する方が、交渉への悪影響は大きくなりやすいといえます。

質問2. タイムカードがなければDDに対応できませんか?

対応不能とは限りません。日報、現場入退場、車両記録、メール、パソコンログなどから実態を検討します。ただし推計幅が大きくなるため、現在から客観的な勤怠記録を導入し、元資料を保全することが重要です。

質問3. 管理職には残業代を払わなくてよいですか?

社内の役職名だけで一律に判断することはできません。権限、職務内容、勤務の裁量、待遇など実態を踏まえた検討が必要です。工事部長や営業所長という肩書だけで対象外としている場合は、専門家に確認してください。

質問4. 一人親方は労務DDの対象外ですか?

契約上は外注でも、働き方の実態や安全管理、継続的な依存関係は確認されます。偽装請負や労働者性の論点だけでなく、買収後も協力を得られるか、適切な保険加入があるかという事業継続面も対象になります。

質問5. 労務改善はM&Aの公表後に行えばよいですか?

公表前でも、適正な勤怠把握、残業申請、休日管理など通常の改善は進められます。改善実績は不確実性を下げる材料になります。ただし賃金や就業規則の変更は従業員への影響が大きいため、専門家と手順を検討してください。

質問6. 労務DDにはどれくらいの期間が必要ですか?

従業員数、拠点・現場数、資料の保存状態、制度の複雑さで異なります。勤怠と給与の突合、サンプル月の確認、質問対応に時間がかかるため、売却を具体化する前から資料整理を始めると、全体日程を守りやすくなります。

質問7. 社会保険の誤りはどのように開示しますか?

対象者、期間、誤りの種類、推定負担、調査・是正状況を整理します。行政機関への手続や本人負担分の扱いは個別判断が必要なので、社会保険労務士等へ相談し、勝手に相殺や徴収を進めないことが大切です。

質問8. 譲渡企業の相談費用はかかりますか?

工事M&A総合センターでは、譲渡企業様は着手金・中間金・成功報酬0円です。会社売却を決める前の段階でも、どの資料から整理すべきか、候補企業へどの順番で説明すべきかをご相談いただけます。

会社売却を円滑にする労務DDチェックリスト

  • 従業員区分、資格、勤務場所、給与体系を一覧化した
  • 雇用契約書と就業規則の最新版・旧版を保存した
  • 協定届と変形労働時間制の書類を整理した
  • 勤怠、給与、日報、入退場等を月別に突合した
  • 直行直帰、移動、朝礼、日報作成のルールを文章化した
  • 固定残業代と管理監督者の運用を点検した
  • 休日出勤、振替休日、代休、有給休暇を区分した
  • 社会保険・労働保険の加入者と届出を確認した
  • 一人親方・外注の契約と実態を確認した
  • 潜在額を前提別に試算し、専門家の見解を得た
  • 将来の是正コストを事業計画へ反映した
  • 個人情報を守る段階的な開示方法を決めた
  • 発見事項、是正策、実施時期を説明メモにまとめた

まとめ:労務の「見える化」が建設会社M&Aの不確実性を下げる

建設会社の会社売却では、未払残業、勤怠管理、固定残業代、変形労働時間制、社会保険、一人親方の取り扱いなどが相互に関係します。規程だけを整えるのではなく、現場の実態と客観記録を確認し、差異を説明できる状態にすることが重要です。

問題が見つかったときは、隠すのではなく、事実の範囲、合理的な推計、将来の改善を整理します。適切な情報開示は、譲受企業の不安を減らし、価格や契約条件を具体的に交渉する土台になります。受注力と施工力を支える従業員が、M&A後も安心して働ける体制を示すことは、企業価値の維持にもつながります。

工事M&A総合センターでは、建設・工事会社の事情を踏まえ、資料整理、候補企業選定、DD対応、条件調整まで支援しています。譲渡企業様は着手金・中間金・成功報酬0円です。後継者不在、人材確保、許可・資格者の承継、労務上の不安がある場合も、まずは現状を整理するところからご相談ください。

免責事項:本記事は建設会社のM&Aに関する一般的な情報提供を目的としたもので、個別案件に対する法律、労務、社会保険、税務または会計上の助言ではありません。制度の適用、未払額、手続、契約条件は事実関係により異なります。具体的な判断は、弁護士、社会保険労務士、税理士、公認会計士その他の適切な専門家へご相談ください。

工事会社M&Aの実務をさらに確認する

会社売却を検討する前に、譲渡条件、企業価値、秘密保持、候補先探索の全体像を確認できます。

工事会社の譲渡相談企業価値診断M&Aの流れM&A事例一覧コラム一覧譲渡企業向け無料相談
コラム
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
  • 建設会社の会社売却で工事保険・賠償責任保険はどう見られる?譲渡企業が押さえたい保険DDとM&A実務
  • 建設会社の会社売却で下請代金・支払サイト・手形はどう見られる?譲渡企業が押さえたい取引適正化DDとM&A実務

この記事を書いた人

株式会社M&A Do 代表取締役 濱田啓揮のアバター 株式会社M&A Do 代表取締役 濱田啓揮

東京都昭島市出身。慶應義塾大学理工学部を卒業後、大手M&A仲介会社にて勤務し、その後株式会社M&A Doを立ち上げ。工事業のM&Aを過去多数支援。

関連記事

  • 建設現場で労災・事故履歴と安全衛生管理を確認するM&A担当者
    建設会社M&Aで労災・事故履歴をどう調べる?安全衛生DDと引継ぎ実務
    2026年8月14日
  • 建設会社M&Aで工事台帳・原価管理システム・クラウドデータを安全に承継するイメージ
    建設会社M&Aで工事台帳・原価管理システムを承継する方法|クラウド・現場データ移行の実務
    2026年8月13日
  • 建設会社の会社譲渡に向け未成工事支出金と受注残を確認する財務DD会議
    建設会社の会社譲渡で未成工事支出金・赤字工事はどう見る?財務DDと受注残評価の実務
    2026年8月10日
  • 建設会社の会社譲渡に向けて資格者・技術者の引継ぎ計画を確認する経営者と現場技術者
    建設会社の会社譲渡で資格者・技術者の退職を防ぐ|人材DDとM&A引継ぎ実務
    2026年8月9日
  • 豪雨後の復旧現場でBCPと事業承継計画を確認する建設会社の経営者と技術者
    建設会社の会社売却でBCP・災害協定はどう引き継ぐ?譲渡企業が押さえたい事業継続DDとM&A実務
    2026年8月8日
  • 東京都の工事会社M&A・事業承継完全ガイド|建設業許可・経審・技術者を守る実務
    2026年7月31日
  • 神奈川県の工事会社M&A・事業承継完全ガイド|建設業許可・経審・技術者を守る実務
    2026年7月30日
  • 建設会社M&Aで建設業許可・経審・入札参加資格の承継を確認する担当者
    建設会社M&Aで許認可・経審・入札資格を承継する方法|公共工事を止めない実務
    2026年7月22日
  • 会社案内
  • お問い合わせ
  • プライバシーポリシー
  • 中小M&Aガイドライン
  • サイトマップ

© 工事M&A総合センター.

  • メニュー
  • 電話相談
  • 無料相談
目次