工事会社の企業価値を考えるには、過去の利益と、受注済み工事を今後どの体制・原価で完了できるかを分けて確認します。許可や経審の点数だけで価格が決まるわけではありません。本稿では、譲渡額の相場を断定せず、買い手との条件比較に使う資料と確認方法を整理します。
- 決算上の利益と工事別の見込利益を分ける
- 許可・人員・協力会社を数字の根拠として説明する
- 提示価格だけでなく負担と支払条件を比較する
工事会社・専門工事会社の譲渡を検討中の方へ
工事M&A総合センターでは、譲渡企業様から着手金・中間金・成功報酬をいただかず、匿名相談の段階から状況整理を支援しています。
当センターへの譲渡側報酬0円と、外部専門家・登記・許認可等の費用や税金は別です。必要な費用と負担者は個別に確認します。
1. 評価対象と利益の定義をそろえる
最初に、株式全体を譲渡するのか、一部の事業・資産を譲渡するのかを明確にします。同じ「企業価値」という言葉でも、株式、事業、土地・設備など評価する対象が違えば、そのまま比較できません。基準日、対象範囲、現預金・借入金・役員貸借の扱いを提案書で確認します。
中小M&Aガイドラインは複数の評価方法を示し、案件に応じた選択と当事者間の交渉が必要であると説明しています。計算した価値がそのまま成約額になるわけではありません。工種や売上規模が近い他社の希望価格も、自社の成約価格を示すものではありません。
EBITDAを使う場合は、営業利益に減価償却費を加えるなど、採用する定義と調整項目をそろえます。設備投資、借入返済、税金、運転資金をすべて差し引いた手元資金とは異なります。社長退任後の代替人件費、一時的な補修費、資産売却益などは、継続する費用・利益と分けて根拠を示します。
2. 受注残から、残る利益と資金負担を確かめる
受注残には今後の売上の手掛かりがありますが、同額の利益が残っているわけではありません。契約済み工事について、出来高、既発生原価、残原価、追加変更、工期を同じ基準日で整理します。内示や見積提出中の案件は契約済みと区別します。
| 確認項目 | 工事別に見る資料と判断 |
|---|---|
| 見込粗利 | 契約額と原価見積りの更新日を確認。材料・労務・外注費の残額を見直し、完了までの利益と不確定費用を分けます。 |
| 追加変更 | 口頭依頼、見積提示、書面合意を区別。未合意額を確定売上として扱わず、交渉状況と証拠を添えます。 |
| 回収と支払 | 前受金、出来高請求、検収後の残金と、資材・外注の支払予定を照合。利益が出ても先行資金が必要な期間を見ます。 |
| 会計との対応 | 工事台帳を未成工事支出金・受入金、完工未収入金等と照合。不一致は原因と修正方針を示します。 |
工事別粗利のばらつきは、公共・民間、元請・下請、工種、発注者別に分けると理由を追いやすくなります。比率の高低だけで評価の優劣を決めず、価格変更の余地、支払条件、保証責任、継続発注の条件を合わせて確認します。
3. 許可・技術者・協力会社を、継続性の根拠として示す
許可や資格者数は、単独の加算価格を示すものではありません。どの工種を受注し、営業所と現場に誰を配置できるか、その体制が譲渡後も成立するかを検討する資料です。建設業許可の対象業種、一般・特定、更新時期、営業所技術者等の配置を確認します。
株式譲渡でも役員・技術者等の変更と許可要件の確認は必要です。事業譲渡では許可の事前認可制度の対象・要件と日程を確認します。経審は2026年7月1日施行の改正があり、基準日・適用基準をそろえます。入札参加資格と既存工事契約は別に扱い、P点を引き継げば同じ受注が続くとは見込みません。
人員表には資格のほか、見積、工程、安全、品質、顧客対応の担当を記載します。社長や一人の職長に判断が集中している場合は、引継ぎに必要な期間と代替体制を説明します。従業員の雇用条件や必要手続は承継方法ごとに確認し、残留を確約しません。
協力会社は登録社数より、直近の発注実績、対応できる工種・地域、契約単価、繁忙期の余力、支払条件を整理します。特定先への集中がある場合は、関係の経緯と代替調達の見通しを示します。担当者の口約束と書面で確認できる条件は分けます。
4. 補修・安全・労務と設備の負担を一覧にする
過去の不具合は、発生件数だけでは必要負担を判断できません。対象工事、相手の請求、原因、対応期限、見込費用、保険・協力会社への求償の状況をまとめます。解決済み、対応中、金額未確定を区別し、資料のない見込額を確定値にしないようにします。
労務面では雇用契約、勤怠、時間外労働、未払の有無を確認します。事故・安全関係は行政対応、再発防止、保険契約まで含め、今後の運営費用への影響を検討します。土地・重機・車両は所有とリースを分け、担保、更新、修繕、返却時負担を確認します。
課題の発見が即座に譲渡不能を意味するわけではありません。実行前の是正、価格への反映、契約上の責任分担、引継ぎ計画のどこで対応するかを相談します。問題を一覧から外すより、現状と未確定の理由が分かる資料にすることが重要です。
5. 提示価格と、支払・責任の条件を並べる
買い手の提案は同じ条件表へ転記します。見出しの金額が高くても、後払い部分、実行条件、譲渡企業の補償負担、社長の残留義務が異なれば、同じ提案ではありません。
| 比較する条件 | 確認する質問 |
|---|---|
| 代金と調整 | いつ何を引き渡し、いつ支払われるか。決済時の現預金・借入金・運転資金等で調整するか。税金や費用は別途いくらか。 |
| 追加対価 | アーンアウトを用いる場合、指標・測定期間・計算方法・確認権限・支払条件は何か。未達なら受け取れない額を分けます。 |
| 責任と引継ぎ | 表明保証・補償の対象、期間、上限と例外、個人保証の解除条件、社長の役割・報酬・拘束期間はどうなるか。 |
追加対価や表明保証は、すべての案件に同じ形で付くものではありません。採用する場合の条項を専門家と確認します。保証の解除や代金支払を、買い手の将来の努力だけに委ねていないかも点検します。
6. 評価を見直せる資料を残す
評価資料は作成時点の前提に基づきます。月次試算表、工事別見込粗利、受注・失注、補修費、主要人員の変化を更新し、以前の数値との差を説明できるようにします。見栄えのよい工事だけを抜き出さず、全体との対応を残します。
候補先との面談前は、決算資料、工事別一覧、借入・資産の内訳、許可・配置表、未解決負担の一覧を優先します。準備の順序は工事会社M&Aの進め方、機密資料の扱いは秘密保持と候補先選びを参照してください。
よくある質問
まだ売却を決めていなくても相談できますか。
可能です。評価の前提と資料の不足を確認し、親族・役員等への承継との比較にも使えます。
従業員や取引先に知られずに進められますか。
初期は集計情報を用い、詳細資料は相手と利用目的を確認して段階的に開示します。会社が特定される可能性や必要な承諾は別に検討します。
赤字工事や補修履歴があると譲渡できませんか。
内容と対応方法によります。損失・補修負担の見積り、再発可能性、費用の負担者を整理して条件を検討します。
譲渡企業側の費用は本当に0円ですか。
当センターへ支払う譲渡側の着手金・中間金・成功報酬は0円です。外部の税務・法務等の専門家、登記・許認可の費用や税金は別途確認してください。
工事会社・専門工事会社の譲渡を検討中の方へ
制度の参照資料(確認日:2026年9月12日)
制度の説明は以下の公表資料を参照しています。資料の整理方法や表は一般的な準備例です。個別の適用条件・必要手続は許可行政庁、発注機関、契約先、専門家に確認してください。

