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建設会社の会社売却でアスベスト・PCB・フロン・産廃対応はどう見られる?譲渡企業が押さえたい環境リスク整理・DD・M&A実務

2026 6/21
コラム
2026年6月21日
建設会社の会社売却におけるアスベスト・PCB・フロン・産廃対応の整理ポイントを示したコラム用アイキャッチ画像

建設会社の会社売却を検討する譲渡企業にとって、近年ますます見逃せなくなっている論点のひとつが、アスベスト、PCB、フロン、産業廃棄物処理、土壌汚染対応といった環境・法令対応です。建設業のM&Aでは、売上高や営業利益、受注残、主要取引先、技術者数だけでなく、「過去の現場や保有設備に起因する将来負担がどこまで潜んでいるか」が買い手の重要な確認項目になります。とくに解体、改修、設備、電気、管工事、内装、塗装、防水、空調、プラント系の事業を含む会社では、環境リスクが契約条件や価格調整に直結しやすく、表面的な説明だけでは通りにくいのが実務です。

譲渡企業の経営者様からは、「違法なことはしていないので大丈夫だと思う」「過去案件の書類は元請側が持っているはず」「フロンやPCBは自社が直接扱っていない」「産廃処理は協力会社任せなので深く見なくてよいのではないか」といった相談を受けることがあります。しかし買い手は、違法行為の有無だけでなく、記録の残し方、委託先管理、説明責任の果たし方、将来是正が必要になった場合の費用感まで含めて確認します。建設会社の会社売却で環境リスクが問題になるのは、発見時に一気に損失化しやすく、行政対応、発注者対応、近隣対応、補修対応まで波及する可能性があるためです。

本記事では、「建設会社 会社売却」「工事会社 売却」「建設業 M&A」「環境リスク DD」といった検索意図を持つ譲渡企業向けに、アスベスト・PCB・フロン・産廃対応がなぜ見られるのか、買い手はどこまで確認するのか、譲渡企業は何を整理しておくべきかを、M&A実務の視点から整理します。内容は一般的な情報提供であり、法律・税務・会計・行政実務に関する最終判断を示すものではありません。個別案件では、弁護士、税理士、会計士、社労士、行政書士、解体・廃棄物・環境分野の専門家、所管行政庁などへの確認を前提にご活用ください。

目次

建設会社の会社売却で環境リスクが重視される理由

買い手が建設会社を譲り受けるときに知りたいのは、譲受後に予定外の支出や信用毀損が発生しないかという点です。環境リスクは、損益計算書にすぐ現れないまま潜在化しやすく、クロージング後に発覚すると、買い手が想定していた投資回収計画を大きく崩します。たとえば、過去の改修工事でアスベスト含有建材への対応記録が曖昧だった、撤去設備に含まれるPCB機器の管理履歴が追えない、フロン回収の証憑が案件ごとに散在している、産廃マニフェストの保存や突合が不十分だった、という状態は、すべて「あとから費用化するかもしれない論点」として扱われます。

また、建設業の環境リスクは単なる法令対応の問題にとどまりません。元請・施主・官公庁・管理会社・大手デベロッパーとの継続取引に関わるため、受注基盤の安定性とも結びつきます。買い手は、環境対応の精度を通じて、譲渡企業の内部管理水準、現場統制力、再発防止力、教育体制を見ています。つまり、環境リスクの整理は「守りの論点」であると同時に、「この会社は引き継ぎやすいか」を測る攻めの評価項目でもあります。

  • 簿外債務や偶発債務につながる可能性がある
  • 元請・発注者との継続取引に影響しやすい
  • 是正費用や調査費用が価格交渉の材料になりやすい
  • 過去案件の管理精度が内部統制の代理指標になる
  • クロージング後の表明保証請求や補償条項と結びつきやすい

すでに簿外債務・偶発債務の整理ポイントでも触れられている通り、買い手は「今ある数字」だけでなく「将来発火しうる論点」を見ています。環境対応は、その代表例のひとつです。

アスベスト対応は、過去案件の管理履歴と説明可能性が見られる

アスベストは、建設会社のM&Aで非常に質問が多い論点です。とくに解体工事、改修工事、設備更新、内装解体、管工事、電気工事に関わる会社では、元請として対応していたのか、下請として施工していたのか、自社で事前調査にどこまで関与していたのか、調査報告書や作業計画書、近隣説明、飛散防止措置、処分記録の整理がどうなっているのかを確認されます。買い手は、すべての案件で完璧な記録が揃っていることを期待しているわけではありませんが、少なくとも自社がどの工種・どの工程で関与し、どこにリスクが残りうるかを把握していることを重視します。

譲渡企業が注意すべきなのは、「元請が管理していたから自社の責任ではない」と一足飛びに説明しないことです。実務では、責任の最終帰属だけでなく、自社がどの説明を受け、どの指示に基づき、どの証憑を保持しているかが問われます。たとえば、受注時の仕様書、見積条件、調査結果の受領有無、協力会社への指示内容、完了後の報告書の保管場所などが曖昧だと、買い手は「責任範囲が見えない会社」と判断しやすくなります。

一方で、過去案件のすべてを洗い直す必要があるとは限りません。まずは、アスベスト対応が論点になりやすい案件群を抽出し、案件規模、工種、元請・施主属性、保管書類の有無、外部専門業者の関与有無を一覧化するだけでも、DDの通しやすさは大きく変わります。買い手は完璧さより、実態把握の誠実さと改善余地の見える化を評価します。

PCB機器は「保有の有無」だけでなく、管理台帳と処理計画が問われる

PCBは、古い受変電設備、安定器、変圧器、コンデンサ等に関わる可能性があるため、電気工事会社、設備工事会社、建物保守を伴う会社、古い倉庫や資材置場を保有する会社では要注意です。買い手は、PCB機器を自社保有しているかだけでなく、過去に撤去・搬出・保管・処理に関与した履歴があるか、仮置き資材や保管設備に該当可能性がないか、外部委託先とのやりとりが追えるかを確認します。

この論点で問題になりやすいのは、「昔から置いてある設備だが誰も中身を確認していない」「撤去時の処分証明が探せない」「賃貸倉庫に移したあと管理者が変わり、台帳更新が止まっている」といったケースです。買い手から見ると、少額に見える設備でも、調査・分析・保管・収集運搬・処分・行政相談の手間を含めると、想定以上の負担になりえます。そのため、金額の大小より、棚卸し精度と処理方針の明確さが重視されます。

譲渡企業としては、保有設備一覧、固定資産台帳、倉庫内保管物一覧、撤去更新履歴、外部業者への処理委託記録を見直し、PCB該当可能性があるものを切り分けておくことが有効です。該当の有無が断定できない場合でも、「どの範囲を確認済みで、何が未確認か」を明確にするだけで、買い手との対話は進めやすくなります。

フロン対応は設備更新の実務フローと証憑管理が見られる

空調・冷凍冷蔵・設備工事を扱う会社では、フロン類の回収・破壊・再生に関する管理がM&Aの確認事項になりやすいです。買い手は、法令要件の細目を試験するというより、設備更新時の運用フローが標準化されているかを見ています。具体的には、機器撤去時のフロン回収依頼、回収証明書・工程管理票の保管、協力会社選定基準、現場担当者教育、施主や元請への報告体制などです。

現場では、短工期や夜間工事、緊急更新などで書類が後追いになりやすく、案件ごとにファイルの保存場所が異なる会社も珍しくありません。しかしM&Aでは、そのばらつき自体がリスク評価の対象になります。買い手にとっては、「誰が担当でも同じ水準で回るか」が大切だからです。フロン関連の証憑が整理されていれば、設備工事会社としてのオペレーション成熟度を示す材料にもなります。

譲渡企業が準備しておくとよいのは、対象設備の工事フロー図、撤去時の標準手順、証憑サンプル、保管ルール、協力会社一覧、教育記録です。これらは、受注基盤と継続取引の引継ぎ実務を説明するときにも役立ちます。発注者が安心する管理体制を持っているかどうかは、単なる法令順守以上の評価につながるためです。

産業廃棄物対応は、契約・マニフェスト・委託先管理の三点セットで見られる

建設会社売却のDDで、産廃対応は非常に頻繁に確認されます。工事現場で排出される廃材、撤去材、混合廃棄物、汚泥、金属くず、廃プラ、石膏ボード等の取り扱いは工種ごとに差があり、元請・下請の立場によって管理責任の範囲も変わります。そのため買い手は、「自社がどの立場で、何を、どの委託先に、どの契約で、どう管理しているか」を把握できるかを確認します。

ここで重要なのは、個々のマニフェストが存在することだけではありません。委託契約書、許可証の確認、更新管理、電子マニフェストか紙か、現場完結か本社回収か、突合確認者は誰か、保存年限の運用はどうか、といった管理設計全体が問われます。譲渡企業が「処分は協力会社に任せている」と説明するだけでは、買い手は安心できません。協力会社任せであるほど、委託先選定やチェック体制の説明が必要になります。

また、産廃対応の不備は、財務的な損失だけでなく、元請からの指名停止、再発防止報告、行政相談、現場停止といったオペレーション面の損失にもつながります。だからこそ、買い手は実務フローの再現性を見ています。案件別の個票に加え、会社全体の標準管理ルールを見せられる譲渡企業は、DDでの評価がぶれにくくなります。

土壌汚染・地下タンク・倉庫資材の論点は、不動産を持つ会社ほど早めに点検したい

施工会社そのものが直接土壌汚染を発生させていないとしても、本社、資材置場、倉庫、作業場、古い営業所などの不動産を保有している場合は、買い手が不動産リスクとして確認することがあります。塗料、溶剤、油脂類、薬剤、旧設備、地下タンク、廃材仮置きスペースなどがあると、「将来売却や移転の際に問題化しないか」という観点が加わります。

とくに、長年同じ場所を使ってきた中小建設会社では、資材や設備の入れ替え履歴が担当者の頭の中にしかないケースがあります。M&Aでは、その属人性がそのままリスク認識の曖昧さとして見られます。買い手が求めているのは、精密調査をすべて先回りして行うことではなく、どの不動産にどういう懸念があり、過去にどのような使用実態があり、現時点で何が確認済みかを整理することです。

不動産関連の論点は、企業価値評価や価格交渉の考え方にも影響します。潜在リスクの把握が曖昧なままだと、買い手は保守的な前提で価格を下げやすくなります。逆に、懸念箇所を自社で把握し、必要なら限定的な調査や専門家コメントを用意しておけば、過度なディスカウントを避けやすくなります。

買い手は何をDDで確認するのか

環境リスクDDでは、法務DD、財務DD、ビジネスDD、場合によっては環境専門DDが横断的に絡みます。建設会社の規模が中小であっても、案件特性によってはかなり具体的な質問が来ます。譲渡企業としては、質問の多さに身構えるより、論点を事前に整理しておくことが重要です。

  • どの工種・案件でアスベスト、PCB、フロン、産廃が論点化しやすいか
  • 対象案件の件数、規模、主要顧客、最近の傾向
  • 標準手順書、教育資料、チェックリストの有無
  • 委託先管理の方法と更新確認フロー
  • 事故、行政指摘、クレーム、是正履歴の有無
  • 将来費用が発生しうる未解決事項の有無

ここで大切なのは、ゼロリスクを装わないことです。買い手は、問題が皆無の会社を探しているというより、問題の所在を理解し、引継ぎ後にコントロールできる会社を探しています。小さな未整備を隠そうとして全体の信用を失うより、「現状はこうで、ここまで整理済み、残る論点はこれで、こう改善する」という説明のほうが実務的には高く評価されます。

譲渡企業が最初に作るべき環境リスク整理シート

DDが始まってから慌てて資料を集めると、現場責任者や総務担当に負担が集中し、通常業務にも影響が出ます。そこで有効なのが、売却検討の初期段階で「環境リスク整理シート」を作ることです。難しいものではなく、工種別・案件別・拠点別に論点を並べ、確認状況を可視化する一覧表で十分です。

たとえば、列項目としては、対象区分、案件名または拠点名、発生しうる論点、保管書類、保管場所、担当者、未確認事項、今後の対応方針、外部専門家確認要否、といった形が考えられます。この一覧があるだけで、買い手の質問に対し「誰に何を聞けばよいか」が明確になり、資料提出のスピードも精度も上がります。

さらに、環境リスク整理シートは、売却前の資料チェックリストと組み合わせると効果的です。建設会社のM&Aでは、財務資料と契約資料だけでは十分ではありません。現場運営に紐づく実務資料まで射程に入れた準備が、価格維持と交渉の安定につながります。

買い手のタイプによって、環境リスクの見られ方は変わる

一口に買い手といっても、同業の工事会社、周辺工種へ広げたい事業会社、地域展開を進めたい中堅企業、投資ファンドの支援先など、属性によって確認の深さや着眼点は異なります。譲渡企業は、この違いを理解しておくと、同じ資料でも説明の重点を変えやすくなります。

同業の工事会社が買い手になる場合は、アスベストや産廃の現場実務を理解しているため、説明の甘さが通じにくい一方、是正の難易度も具体的に共有しやすい傾向があります。過去案件の台帳、標準手順、委託先管理の粒度まで細かく見られやすく、現場責任者同士で踏み込んだ質疑になることもあります。

異業種や周辺工種の会社が買い手になる場合は、法令実務に不慣れな分、不確実性を大きめに見積もりやすいです。つまり、論点が曖昧なままだと過度に保守的な評価を受けやすくなります。このタイプの買い手には、対象範囲、管理フロー、使用書式、教育の仕組みまでセットで見せるほうが安心感につながります。

投資ファンド系の買い手やその支援先は、将来の再売却を見据えているため、「次の買い手にも説明できる状態か」を重視します。個別の違反有無だけでなく、管理体制が継続可能か、経営者依存をどこまで外せるか、PMIで短期間に平準化できるか、といった観点が加わります。譲渡企業としては、環境リスク対応を単独の問題としてではなく、会社運営の標準化の一部として示すことが有効です。

現場任せを脱して、データルームに入れる資料をどう整えるか

DDで評価を落としやすい会社の共通点は、資料が存在しないことよりも、資料の所在と意味が第三者に伝わらないことです。現場担当者ごとにフォルダ名が違う、紙で保管しているが索引がない、総務と工事部で同じ資料を別管理している、という状態だと、実際以上にリスクが大きく見えます。したがって、売却前にやるべきことは、完璧な再整理よりも「見つかる」「説明できる」「抜けが分かる」状態に近づけることです。

実務では、環境関連資料だけの専用データルーム棚を用意し、論点別に最低限の資料を置く形が有効です。たとえば、アスベスト、PCB、フロン、産廃、不動産関連、行政指摘・事故履歴、社内規程・手順書、教育記録、委託先一覧、主要案件サンプル、といった区分です。この棚分けがあるだけで、買い手は「会社として整理する意思がある」と判断しやすくなります。

さらに、各フォルダの先頭に一枚の要約メモを付けると、DDの効率が大きく上がります。そこには、対象範囲、含まれる資料、未収集資料、重要論点、確認中事項を書いておきます。中小建設会社のM&Aでは、資料そのものの量より、文脈の共有が成否を分けます。整理メモは小さな工数で効果が大きい施策です。

経営者だけで抱えず、現場・総務・経理を巻き込んだ準備が必要

環境リスク整理は、経営者が一人で進めるには限界があります。なぜなら、現場実態は工事部、委託契約や保管台帳は総務、支払や固定資産との突合は経理に分散しているからです。建設会社の売却準備では、これらの情報を短期間で束ねる必要があるため、社内の協力体制を早めに整えることが重要です。

ただし、売却情報の秘匿性もあるため、いきなり広範囲に共有するのは適切ではありません。実務上は、経営者、信頼できる管理部門責任者、必要に応じて工事部のキーパーソンに限定し、通常の業務改善や資料整備の延長として進めるケースが多いです。売却の目的を全面的に開示するかどうかは案件次第ですが、少なくとも「なぜ今この資料が必要か」を説明できる状態にしておくべきです。

社内連携がうまくいくと、環境リスク対応だけでなく、CCUS・資格者配置・技能者台帳の整理や、社会保険・労務DDの準備とも連動しやすくなります。M&Aの評価は個別論点の足し算ではなく、会社全体の引継ぎやすさとして見られるからです。

是正前でも売却はできるが、説明順序を間違えないことが重要

譲渡企業のなかには、「全部整ってからでないと売却相談してはいけないのではないか」と考える方もいます。しかし実務では、環境対応に軽微な未整備があっても、それだけで売却不能になるわけではありません。重要なのは、未整備の内容を把握し、重大性を見極め、買い手にどのタイミングでどう説明するかです。

たとえば、書類保存のばらつき、旧案件の証憑取り寄せ中、委託先更新確認の一部遅れといった論点は、早めに棚卸しすれば、交渉プロセスの中で十分に補正できることがあります。一方で、重大な行政指摘の未解決、潜在的な高額是正費用、責任範囲の認識齟齬などは、初期の匿名打診段階で伏せるにしても、基本合意前後では方針を整理しておくべきです。

この見極めは、譲渡企業だけで抱え込まず、仲介会社やアドバイザーと共有して進めるのが現実的です。工事業界M&A総合センターでは、譲渡企業様は着手金・中間金・成功報酬0円でご相談いただけるため、資料化の優先順位や、どの論点をどの段階で開示すべきかを早めに整理しやすい体制があります。売却準備では、完璧さよりも順序設計が重要です。

価格交渉・最終契約ではどこに影響するのか

環境リスクが価格交渉に影響する局面は大きく三つあります。第一に、企業価値算定の前提に織り込まれるケースです。将来是正費用や調査費用が一定程度見込まれる場合、買い手はその分を価格に反映しようとします。第二に、最終契約の表明保証・補償条項に反映されるケースです。環境関連の遵法状況、過去違反の有無、未開示事項の不存在などについて、文言が厳格化されることがあります。第三に、クロージング前の対応事項、つまりCPや事前是正条件として設定されるケースです。

譲渡企業として不利になりやすいのは、リスク自体よりも「どこまで分かっているか」が曖昧な状態です。買い手は不明確な論点を最も嫌います。不明確であればあるほど、広めの補償、長めの補償期間、強めの価格調整メカニズムを求めやすくなります。逆に、対象範囲、現時点の確認結果、想定最大負担、対応スケジュールが見えていれば、論点を限定しやすくなります。

すでに個人保証・連帯保証の整理や建設業許可の承継実務でも共通するように、M&Aでは「整理されていない不確実性」が条件悪化の主因になりやすいです。環境リスクも同じで、早めの棚卸しが交渉余地を守ります。

譲渡企業が今からできる準備の優先順位

準備を始めるといっても、いきなり全案件を再点検する必要はありません。実務上は、影響度と実行負荷を見ながら、優先順位をつけて進めるのが合理的です。

  1. 自社の工種・案件・拠点の中で、環境リスクが出やすい範囲を特定する
  2. アスベスト、PCB、フロン、産廃の各論点について、保管書類と担当者を洗い出す
  3. 事故・行政指摘・クレーム・是正履歴の有無を確認する
  4. 未確認事項を「重要」「中程度」「軽微」に分ける
  5. 買い手説明用の要約資料を作る
  6. 必要に応じて専門家確認や追加調査の要否を判断する

この順で進めれば、限られた時間でもDD耐性を高められます。売却プロセス全体については、工事会社M&Aの流れもあわせて確認しておくと、どの段階で何を揃えるべきかが見えやすくなります。

環境リスクを買い手にどう説明すればよいか

実務では、説明の仕方によって印象が大きく変わります。おすすめなのは、論点ごとに「対象範囲」「現状」「確認済み資料」「残る課題」「今後の対応」を並べる方法です。これにより、買い手は未整備事項の存在を理解しつつも、会社として管理可能な範囲にあるかを判断しやすくなります。

逆に避けたいのは、「たぶん大丈夫」「昔から問題なかった」「元請が見ているはず」といった抽象表現だけで済ませることです。こうした説明は、譲渡企業に悪意がなくても、管理不十分の印象を与えます。中小建設会社ほど、経営者やベテラン担当者の経験に依存して現場が回っているため、説明の型を整えるだけでも評価が改善しやすいです。

企業価値や条件面に不安がある場合は、企業価値診断や譲渡をご検討の方向けページも参考になります。どの論点が価格に効きやすいかを早めに把握しておくと、準備の優先順位を誤りにくくなります。

FAQ:建設会社の会社売却と環境リスクでよくある質問

Q1. アスベスト関連書類が一部不足していてもM&Aは進められますか?

A. 進められる可能性はあります。ただし、不足範囲、対象案件、代替資料の有無、責任範囲の認識を整理しないまま進めると、価格調整や表明保証の厳格化につながりやすくなります。重要なのは、欠けている事実を隠さず、どこまで確認済みかを示すことです。

Q2. PCB該当の可能性がある設備が残っている場合、売却前に必ず処理完了が必要ですか?

A. 一律ではありません。重大性、法令上の期限、保管状況、買い手の意向、価格への影響を踏まえて判断されます。未処理であっても、対象物の特定、管理状況、今後の処理方針が整理されていれば、交渉の余地は残ります。

Q3. フロン回収証明書が案件ごとに散在しています。どこまで集めるべきですか?

A. まずは主要案件、最近の案件、継続取引先案件から優先して整理するのが実務的です。全件を完全回収するより、どの案件群が整理済みで、どの案件が取り寄せ中かを一覧化するほうがDD対応として有効なことも多いです。

Q4. 産廃処理を外注している場合、自社のリスクは小さいと考えてよいですか?

A. そうとは限りません。外注しているほど、委託先選定、許可確認、契約管理、マニフェスト突合、更新確認の運用が見られます。外部任せであること自体が問題ではなく、外部任せをどう管理しているかが問われます。

Q5. 環境リスクはどのタイミングで仲介会社やアドバイザーに共有すべきですか?

A. できるだけ早い段階が望ましいです。初期段階で共有しておけば、匿名打診資料の作り方、開示順序、買い手候補の選び方、基本合意までの論点整理がしやすくなります。後半で急に発覚するより、早めの整理のほうが条件を守りやすいです。

Q6. どこまで自社で準備し、どこから専門家に相談すべきですか?

A. 自社では、対象範囲の棚卸し、資料所在の確認、事故・指摘履歴の整理、未確認事項の洗い出しまで進めるのが有効です。一方、法令解釈、是正の要否判断、行政対応、専門調査の設計は、案件内容に応じて専門家確認を入れるのが安全です。

まとめ:環境リスクの整理は、条件を守るための事前準備

建設会社の会社売却でアスベスト・PCB・フロン・産廃対応が見られるのは、単にコンプライアンスを採点するためではありません。買い手は、その会社が将来の追加負担をどこまでコントロールできるか、元請・施主との信頼関係を維持できるか、引継ぎ後も安定運営できるかを見ています。譲渡企業にとって重要なのは、問題をゼロに見せることではなく、対象範囲と現在地を可視化し、説明可能な状態にしておくことです。

売却準備の早い段階で環境リスク整理シートを作り、主要案件や保有不動産、設備、委託先管理の状況を棚卸ししておけば、DD対応、価格交渉、最終契約のどの局面でも有利に働きます。建設業ならではの論点を含めて整理したい場合は、譲渡企業向けお問い合わせフォームからご相談ください。譲渡企業様は着手金・中間金・成功報酬0円でご相談いただけます。

早めに論点を見える化しておくことは、単なるリスク回避ではなく、譲渡企業の強みを正しく評価してもらうための準備でもあります。環境対応を整理できる会社は、引継ぎ後の再現性が高い会社として見られやすくなります。

なお、本記事は建設会社・工事会社のM&Aに関する一般的な情報提供を目的としたものであり、法務・税務・会計・労務・環境規制に関する個別助言ではありません。実際の案件では、契約条件、工種、保有資産、過去案件、行政対応履歴によって論点が大きく異なります。最終的な判断は、必ず各分野の専門家および関係機関にご確認ください。

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この記事を書いた人

株式会社M&A Do 代表取締役 濱田啓揮のアバター 株式会社M&A Do 代表取締役 濱田啓揮

東京都昭島市出身。慶應義塾大学理工学部を卒業後、大手M&A仲介会社にて勤務し、その後株式会社M&A Doを立ち上げ。工事業のM&Aを過去多数支援。

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